〇神経科学の問題2

広範調節系について、空欄を埋めよ

広範囲調節系(diffuse modulatory system)のニューロン群は大部分が脳幹にあり、広範囲に軸索を伸ばし、神経伝達物質はシナプス間隙に限定されずに拡散する。橋にある(a)__は__作動性の各12000のニューロンからなり、(a’)__を司る。9つの核群に分かれている、(b)__は__作動性で、(b’)__を司る。(a)(b)を合わせて(c)__と呼ぶ。

ドーパミン作動性ニューロンは脳全体に散在しているが、そのうち2つ(d)__、__が広範囲調節系として機能している。前者は随意運動に関わり、後者は前頭葉に投射して報酬系に関わっていると考えられている。またこれらの他に(e)__作動性の内側中隔核・マイネルト基底核(機能詳細は不明)、橋中脳被蓋複合体(視床間隔中継の興奮性を調節)が知られている。

空欄に入る語句
(a)青斑核(NA作動性):学習と記憶、不安、気分、注意、覚醒、睡眠-覚醒サイクル
(b)縫線核群(セロトニン作動性):睡眠-覚醒サイクル (c)上行性網様体賦活系(ascending reticular activating system) (d)黒質(大脳基底核に投射)、腹側被蓋野(前頭葉に投射し、報酬系に関与) (e)コリン作動性

記憶の種類と、海馬で起こるLTPの分子基盤について、説明せよ

長期記憶と短期記憶に分けられる。短期記憶は数分から数秒から時間単位で保持でき、作業記憶(ワーキングメモリ)とも呼ばれる。長期記憶は陳述記憶(言葉にできる記憶)と非陳述記憶(手続き記憶)に分けられ、陳述記憶はさらに意味記憶とエピソード記憶に分けられる。

海馬CA1での長期増強(LTP)は、NMDA受容体がMg2+のブロックを外し、Ca2+を流入するようになることで、細胞内でキナーゼが働き、膜上へさらにAMPA受容体を移行させることなどによると考えられている。

小脳で起こる長期抑圧について、空欄を埋めよ

(a)__によるプルキンエ細胞の強力な脱分極が起きると、(b)__によるカルシウム濃度上昇が起こる(またカルシウムか)。同時に(c)__からの入力でもカルシウム濃度が上昇し、細胞内でPKCが活性化する。PKCは(d)__をリン酸化し、するとエンドサイトーシスにより細胞内に取り込まれる。(海馬のCA1と逆だ。)

(a)登上線維 (b)電位依存性カルシウムチャネルの開口 (c)平行線維 (d)AMPA受容体

シナプス伝達

(1)*神経伝達物質のシナプス後細胞への作用が終息するしくみの概要と、アセチルコリンの合成・貯蔵・分解を説明せよ

作用の終息は、(a)__・__・__による。

アセチルコリンは、(b)__でコリンと(c)__を基質として(d)__によって合成され、(e)__に存在する__によって細胞質から小胞内に輸送される。シナプス小胞の中で貯蔵されたアセチルコリンは、活動電位の発生によってシナプス間隙に放出され、(f)__によってコリンと酢酸に分解される。コリンは、コリントランスポーターにより(g)__を利用したシンポートにより細胞質へ回収される。

なお、GABAやGluの場合は、分解産物ではなくそのまま(アミノ酸のまま)Na+とともにシンポートで取り込むトランスポーターがある。

空欄に入る語句:
(a)シナプス間隙からの再取り込み、拡散、分解酵素による分解 (b)シナプス前終末 (c)アセチルCoA (d)コリンアセチルトランスフェラーゼ (e)シナプス小胞体膜に存在するアセチルコリントランスポーター (f)コリンエステラーゼ(アセチルコリンエステラーゼ) (g)Na+勾配

 

(2)カテコールアミンの合成、貯蔵、分解について説明せよ

カテコールアミンの神経伝達物質(アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミン)はチロシンを出発点として合成される。チロシン水酸化酵素により、チロシンからL-ドーパが合成される。次にドーパ脱炭酸酵素によりドーパミンが合成される。次に、ドーパミンβ-水酸化酵素によりノルアドレナリンが合成され、さらにPNMT(フェントラミンN-メチルトランスフェラーゼ)によりアドレナリンが合成される。ドーパミンβ-水酸化酵素はシナプス小胞内にあるが、PNMTは細胞質にある。

シナプス小胞内に貯蔵され、活動電位の到達によって放出されたカテコールアミンに対して、細胞外で速い分解酵素は存在せず、Na+とのシンポートによりシナプス前細胞に再度取り込まれる。(アンフェタミンやコカインはこれを阻害する。)カテコールアミンは再利用のためにシナプス小胞に再取り込みされたり、ミトコンドリア外膜にあるMAO(モノアミンオキシダーゼ)によって分解される。

*22(3). 神経伝達物質受容体を二種類に大別し、それぞれの構造上の特徴を述べるとともに、アセチルコリンを例にとりそれらの働きを説明せよ

イオンチャネル型とGPCR(Gタンパク質共役型受容体)型(代謝調節型ともいう)がある。イオンチャネルでは、複数のサブユニットが合わさってチャネルを形成する。GPCRは7回膜貫通ドメインを持つという特徴があり、細胞質側にGタンパクを結合する。

アセチルコリンでは、ムスカリン受容体はGPCR、ニコチン受容体はイオンチャネルである。

心筋でムスカリン受容体は、迷走神経終末から放出されたアセチルコリンを結合し、βγサブユニットの活性化を介してK+チャネルを開口させ、これにより心臓の機能を抑える

神経筋接合部の終板(平滑筋側)に存在するニコチン受容体はアセチルコリンを結合し、開口すると主にNa+を細胞内に流入させる。平滑筋は収縮する。(ニコチン受容体は心筋にもあるし、脳内にもある。上述したのは、あくまで筋肉の話。)

**(4)Gタンパク質共役型の神経伝達物質受容体の構造と機能について説明せよ

7回膜貫通タンパク質であり、細胞外に神経伝達物質結合部位を持ち、細胞内に三量体Gタンパク質を結合する。神経伝達物質の結合によりGタンパク質が活性化し、αサブユニットとβγサブユニットのそれぞれが下流へとシグナルをつなげる。イオンチャネルにGタンパク質が直接作用することで、イオン透過性に影響する他に、セカンドメッセンジャーの産生を介してカスケードを起こし、それにより神経細胞の性質(イオン透過性を含む)に影響する場合もある。

(5)三量体Gタンパク質の活性化サイクルについて構造と結びつけて説明せよ

リガンドの結合により受容体の構造が変わると、三量体Gタンパク質のαサブユニットに結合しているGDPがGTPに置き換わり、βγサブユニット複合体と分離する。これらはそれぞれの効果器を活性化する。αサブユニットのGTPが加水分解されてGDP結合型のαサブユニットに戻ると、βγとともにGPCR(の細胞内結合部位に)再結合し、反応が終息する。

(6)Gタンパク質共役型受容体を介した神経細胞内のシグナル伝達の基本原理を説明せよ

活性型のGTP結合型αサブユニットもしくはβγサブユニット複合体は、酵素を活性化することで下流にシグナルカスケードを伝える。Gαsにより活性化されるアデニル酸シクラーゼはcAMPを発生し、これがPKAを介したリン酸化カスケードを引き起こす。この場合のcAMPのように、初めて作られる別種の生成物で下流シグナルを伝えるものを、セカンドメッセンジャーと呼ぶ。


総合的な確認問題

26. 代表的なセカンドメッセンジャーを3つ挙げ、それぞれの代謝ならびに標的分子について説明しなさい。(Text p172-174 “Second Messenger Casscades” 参照)
カルシウムイオン、サイクリックAMP、サイクリックGMP、ジアシルグリセロール、一酸化窒素、イノシトールリスリン酸などが挙げられる。

神経伝達物質となるカテコールアミンの合成経路を書け

チロシン
↓(チロシン水酸化酵素)
L-ドーパ
↓(ドーパ脱炭酸酵素)
ドーパミン
↓(ドーパミンβ-水酸化酵素)
ノルアドレナリン
↓(フェントラミンN-メチルトランスフェラーゼ)
アドレナリン

まとめると、水酸基を付けて、脱炭酸して、また水酸基をβにつけて、最後にメチル基が端に付くとアドレナリン。合成場所は細胞質の酵素と小胞体の酵素があって複雑らしい。また、ミトコンドリア外膜に存在するMAO(モノアミン酸化酵素)がアミノ基をアルデヒド基に酸化し、神経伝達物質は分解される。

神経伝達物質の受容体と下流シグナルについて、以下の空欄を埋めよ

アセチルコリンは、迷走神経の終末から放出されてムスカリン受容体(GPCR)に結合し、(a)__の活性によってK+が開き、その結果洞房結節では心拍数が下がる。運動神経終末から放出されたアセチルコリンはニコチン受容体(イオンチャネル)に結合し、(b)__の流入により筋収縮が誘導される。

グルタミン酸は(c)__、__、__がイオンチャネル型の受容体として知られ、開口により(d)__を流入させる。GPCR型の受容体として(e)__が知られ、下流で(f)__を活性化し、(g)__に働く。

GABAの受容体では、イオンチャネル型の(h)__はGABA結合により(i)__の透過性を高める。一方、GPCR型の(j)__はGABA結合により(間接的に)抑制性に働くがその機序は多様らしい(K+やCa2+受容体と共役していたり、PKA抑制に働いたりするらしい)。

神経伝達物質のうち、唯一イオンチャネル型しか受容体を持たないのは(k)__であり、αおよびβサブユニットの五量体で、(l)__を透過させる。逆に、神経伝達物質の(m)__、__、__の受容体はすべてGPCR型である。

(a)βγサブユニット (b)陽イオン(主にNa+) (c)AMPA受容体、NMDA受容体、カイニン酸受容体 (d)陽イオン(Na+, K+, Ca2+(NMDAではサブユニット種類に依存)) (e)mGluR(代謝型グルタミン酸受容体)(f)GαqやGi/o (g)ニューロンの興奮または抑制(Gαqの場合はPKCを介して興奮性。Gqの例は多くないので覚えておこう)(h)GABAA受容体 (i)Cl (j)GABAB1, B2受容体(2つのサブユニットからなる) (k)Gly (l)Cl (m)NA, DA, 5HT(セロトニン)

参考
http://www.abcam.co.jp/content/metabotropic-glutamate-receptors-1(mGluRがさまざまであることについて)
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/GABA受容体
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/グリシン受容体

GPCRを介したシナプスの興奮伝達について、空欄を埋めよ
神経伝達物質受容体(GPCR)Gタンパク質効果器生成物(セカンドメッセンジャー)シグナルの帰結
NAβレセプターGsアデニル酸シクラーゼ活性化cAMP産生PKA活性化
環状ヌクレオチド依存性イオンチャネル開口
NAα2レセプターGiアデニル酸シクラーゼ活性化cAMP抑制(興奮抑制)
嗅物質(さまざま)Golfアデニル酸シクラーゼ活性化cAMP産生PKA活性化
環状ヌクレオチド依存性イオンチャネル開口→Na+やCa2+の流入Cl-流出(脱分極性)
GlumGluRGqPLC活性化PIP2→DAG+IP3Ca2+増加(IP3依存チャネル)+PKC活性化
ロドプシンGt(トランスデューシン)ホスホジエステラーゼの活性化cGMPからGMPを産生環状ヌクレオチド依存性チャネルが閉じ、シグナルが終息
AChムスカリン受容体(心筋で)βγ直接K+を開口(心拍数減少)
GABAGABABGiなど多様アデニル酸シクラーゼ抑制などcAMP抑制など(興奮抑制)

意外と抑制性のものが多いことに留意。AChと、NAにも抑制性がある。
NA受容体にはアドレナリンも作用する。

参考:
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/ノルアドレナリン
http://hclab.sakura.ne.jp/nerve_phis_parasympathetic.html
(ストレスと自律神経の科学)

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