・循環生理-心電図

心臓の活動と心電図

活動電位の発生

(1)心筋の活動電位が下図のように発生する仕組みを説明せよ

膜電位が閾値を超えるとNa+チャネルが開口する。このチャネルは不活性化ゲートの閉鎖によってすぐに不活性化する。図では、-30mV付近まで膜電位が下がったタイミングで不活性化ゲートが再び開き、相対不応期(非常に強い刺激では反応する)になる。Na+チャネルの不活性化とともに、K+チャネルを介したK+が流出するが、心筋ではこれと拮抗してCa2+がL型Ca2+チャネル(L=long lasting*)を通って(細胞外から)ゆっくり流入するため、プラトー相を形成する。その後、K+流出が相対的に増え、膜電位が元のレベルまで下がる。(*T型のCa2+チャネルはすぐに閉じるので、L型チャネルが寄与している時間の方が長い。なお、__は筋小胞体側にあるCa2+チャネルであり、Ca2+によって活性化する。これもCa2+依存性のCa2+リリースに重要である。)非興奮時のカルシウム排出は(b)__で行っている。

(a)リアノジン受容体 (b)Na+勾配を利用した、Na+/Ca2+ exchanger(交換体)

(2)K+、Na+、Ca2+の濃度勾配維持に関わるポンプを2つ挙げて説明せよ

Na+/K+ポンプが両者を濃度勾配に逆らって輸送する。また、Na+/Ca2+ exchangeはNa+濃度勾配を利用してCa2+イオンを細胞外へ排出する。これらは、どちらもアンチポートである。なお、筋小胞体にCa2+を戻すのは、Ca2+-ATPaseであり、エネルギーを必要とする。

参考
https://en.wikipedia.org/wiki/Sodium-calcium_exchanger

(3)Ca2+流入から筋収縮が起こる仕組みを説明せよ。

トロポニン複合体のサブユニットであるトロポニンCにCa2+が結合すると、トロポミオシンがずれて、アクチンとミオシン頭部の相互作用が可能になる。ATPが結合するとその加水分解のエネルギーを利用してミオシンがアクチンフィラメント上を移動する。

解説:
以下の図で、EWは(一回の拍動で)心臓が外部に行う仕事である。酸素消費量はPVA (Pressure-Volume Area, PVA=PE+EW)に相関しており、カルシウムハンドリング(Ca2+濃度維持)とカルシウムブリッジ(筋線維の収縮)の総和と解釈できる。

心電図

(1)12誘導心電図を説明せよ。

人体の正常構造と機能のp98~もしくは標準生理学のp600~。原理の理解については、特にp601の図が分かりやすい。

心筋の脱分極と再分極に伴う電位変化を体表面で記録したものが心電図である。上に示した活動電位の集合であり、(部位に依るが)下図のような波形になる。

それぞれの頂点が、P, QRS, T, である。P波は心房筋の脱分極であり、(心房の収縮により)血液は房室弁(三尖弁と僧帽弁)を通って心室に入る。QRS波が心室筋の興奮であり、Rの時期に収縮が始まる。ほぼ同じタイミング(Rで)房室弁が閉じ、左心室の収縮(等容性収縮)が始める。QRS波の終わりに動脈弁が開いて駆出期(まだ収縮は続いている)が始まる。T波の終わりに動脈弁が閉じ、等容性の弛緩が起こる。T波は心室筋の再分極を示している。

注意
教科書で確認すること。
12誘導心電図の部位と、意味を覚えること。


心臓の生理

心臓の拍動における圧容積関係

(1)心臓の一回拍出量を増やす仕組みを3つ挙げ、それぞれの圧容積関係をグラフで説明せよ

説明
「前負荷の増加」では、収縮開始時の容積が大きい(図の赤点)。終末期圧―容積関係(実線)は変わらない(Emax上に終わる)。スターリングの法則を反映していると解釈できる(圧の上昇も大きくなる)。「後負荷の減少」(図の青線)では、大動脈弁が早く開く。破線の角度(後負荷)が小さくなっていることに注意すること。「収縮力の増加」は終末期圧―容積関係(実線)の傾きが大きくなることを意味する。左心室の圧がより上昇する。このとき後負荷が変わらないことに注意すること。
病気がみえる循環器p23-25などが分かりやすい。確認すること。大動脈弁が開放する瞬間が常に(大動脈の)最低血圧である。理由:弾性があるので大動脈圧は「大動脈弁が閉鎖後にゆっくりと」低下する。

心拍出量と静脈還流量の変化

(1)血管機能曲線と心機能曲線をグラフに描き、その意味を説明せよ

説明:
血液の環流量は圧勾配によって駆動されるから、右心房圧が高いと勾配差が小さくなり、還流量(l/min)が減る。陽圧の範囲では静脈圧と還流量は負に相関する。心機能曲線は、右心房圧が増加に伴って、(前負荷の増大により)左心室からの1回心拍出量が増加するという、スターリングの法則を示している。

(2)さらに、陽性変力効果(ウワバイン、ジギタリスなど)・血液量増加・総末梢抵抗の増加、の各々による変化を説明せよ

説明:
・ウワバイン等により、心拍出量(と還流量)が増加し、右心房圧は低下する。(赤破線)
・輸血等で血液量増加が増加すると、還流量が増え、心拍出量と右心房圧も増える。(青破線。このとき抵抗は変わらないから平行移動である)
・細動脈の収縮等で総末梢抵抗が増加すると、(R=V/Aと同じで)圧あたりの流量が減るから、還流量(と拍出量)が減り、右心房圧も減る。(緑破線)

*「ある圧力で拍出できる量」と「ある圧力の心房に対して戻ってこれる静脈量」を一致させる点を議論するらしい。後者は血液量ではなく、戻ってこれる量であることに注意。

前負荷・後負荷に対する代償機構を説明せよ

・前負荷の増大(容量負荷の増大)
→心臓が収縮する直前に、いっぱい入るように、遠心性肥大が起きる。サルコメアが縦に並びことによる。慢性的に負荷が続くと心拡大し、収縮性は低下する。

・後負荷の増大(圧負荷の増大)
→駆出時につよく圧に抗してはきだす必要があるため、求心性肥大が起きる。サルコメアは横に並ぶのが増え、収縮力は増す。慢性的に続くと心肥大し、拡張性が低下する。


参考
http://physiology.jp/wp-content/uploads/2014/01/065090260.pdf

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