図と表を覚えたらそれでよろしい。あとアシドーシスとアニオンギャップ。
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腎臓の生理学
腎臓の基本知識
(1)腎臓と排出機構。特にクリアランスについて
体液60%のうち、細胞内液が40%、細胞外液が20%を占める。間質液はこの中の(a)__%を占め、血漿は(b)__%である。腎臓の主要な機能は(c)__、__、__である。
<クリアランスとは>
ある物質xのクリアランス(Cx)を考える。血漿中の濃度をPx、尿中の濃度をUx、尿量をV(ml/min)とすると、尿中に(1分間に)排泄される物質xの量はUx・V となる。これはP・Cxに等しい(としてCを定義する)。よってCx = (Ux・V)/ Px である。
尿の生成過程には、濾過(糸球体の血管内腔からボーマン嚢内腔へ)・再吸収((d)__から__へ)、分泌(再吸収の逆)の3つが含まれるが、(e)__や__は、自由に濾過され、尿細管での再吸収も分泌もされないため、静脈投与後、尿中に排泄されたイヌリン(Uinulin・V)は糸球体で濾過された量に等しい。
つまり、
Uinulin・V(尿量) = Pinulin・GFR(糸球体を濾過された量)
糸球体濾過量= (Uinulin・V(尿量))/ Pinulin
一方、(f)__は、濾過後ほとんどが再吸収されずに尿中に排泄されるため、そのクリアランスは腎血漿流量(renal plasma flow, RPF)を表す。言い換えると、濾過と分泌はなされるが、再吸収がほとんどなく、腎血漿流量の90%が尿中に排出されることが知られている。
つまり、
UPAH・V(尿量) = PPAH x0.9 ・RPF(腎血漿流量)
腎血漿量= (UPAH・V(尿量)/ (PPAHx0.9)
PRFの正常値は700ml/min/1.73m2である。腎血漿流量=糸球体で濾過される量+再吸収される量+そのまま循環する量、であることに注意。(要するに、糸球体濾過量との関係を理解しておくこと。)シンプル生理学p305が分かりやすい。
糸球体で濾過される水分は1日あたり(g)__ほどである。尿量の1~2/lよりずっと多いが、これは大部分が再吸収されるからである。再吸収の70%は(h)__で起こり、15%は(i)__で起こる。またホルモン調節を受け10~20%は(j)__で再吸収される。
空欄に入る語句:
(a)15% (b)5% (c)排泄機能(尿の希釈・濃縮)、体液の調節(体液量・電解質・pH)、分泌機能(レニン、エリスロポエチン) (d)糸球体から糸球体周囲毛細血管 (e)イヌリン・クレアチニン(=イヌリンと異なり、多少再吸収・分泌されるが体内で生産される) (f)パラアミノ馬尿酸(PAH) (g)180l/日 (h)近位尿細管 (i)ヘンレのループ (j)遠位尿細管
参考
以下のような図が書ければ理解しやすい。GRFとRPFは別の位置を指していることに注意。シンプル生理学(p305)の説明がこの本では例外的にわかりやすい。
*Glomerular Filtration Rate (GFR)
Renal Plasma Flow (RPF)
ネフロンの各部位での再吸収と分泌について
[近位尿細管での再吸収について]尿細管周囲毛細血管から、水およびNa+の他多くの物質が再吸収される。(a)__膜での輸送が再吸収のメカニズムにおいて重要になる。尿細管細胞は(血管側の間質にNa+をポンプしているため)低Na+になっており、そのため尿細管から細胞内へNa+が流れ込む。浸透圧勾配に従って水が間質側に再吸収され、電位勾配に従ってCl–も(Na+と同じ側に)再吸収される。さらに、Na+勾配を利用した二次能動輸送として、(b)__、__も再吸収しており、グルコースのトランスポーターがSGLTである。
[ヘンレループでの再吸収について]ヘンレループでは、対向流増幅により溶質(例えばNa+)の濃度勾配が間質(髄質)でできる。(c)__では水の透過性が高いので、(d)__が働いて水も再吸収される。太い上行脚では水が透過しにくく、比較的Na+(とCl–)の透過性が高いので、再吸収される。
[遠位尿細管での再吸収について]ここではNa+ポンプによる再吸収が働く。傍糸球体のマクラデンサ細胞が原尿のCl–濃度低下を感知もしくは、輸入細動脈で圧受容体(baroreceptor)が腎糸球体内圧の低下を感知した場合、(e)__が分泌され、アンジオテンシンの系が働き、(f)__が__から分泌され。これが遠位尿細管でのNa+再吸収とK+排出(Na+/K+ポンプ作用による)を増加させる。
[集合管での再吸収について](g)__の細胞外液浸透圧受容器からの刺激で、下垂体後葉から(h)__が分泌される。集合管に作用して、(i)___する。間質に溶質の濃度勾配があるから、効率よく再吸収される。
(a)腎上皮細胞(尿細管細胞)膜 (b)グルコース、アミノ酸を取り込み、プロトン(H+)を排出 (c)ヘンレループの下行脚 (d)浸透圧 (e)レニン (f)アルドステロンが副腎皮質から分泌 (g)視床下部 (h)バソプレッシン(抗利尿ホルモン、ADH) (i)水チャネルを細胞膜に移行させ、水の再吸収を促進する
*尿が低浸透圧でありうるのは、太い上行脚以降、水を伴わずにNaClが再吸収されるからである。
参考
下表のようなもので覚えよう。試験対策用の簡略表なので留意。明確に分けられるものではないと思うが簡易版。
近位尿細管 | 水・Na+、その他多くの物質が再吸収される ・腎上皮細胞(尿細管細胞)で間質側(=血管側)にNa+をポンプしていることが重要。 →浸透圧により水が間質側に再吸収される →電位勾配に従ってCl-がNa+と同じ側に移動 →二次能動輸送で、グルコース再吸収(SGLT)・アミノ酸再吸収・H+排出する |
ヘンレループ下行脚 | 水が再吸収される ・対向流増幅により間質に溶質(例.Na+)の濃度勾配ができており、かつ下行脚では水の透過性が高い。 →浸透圧により水が間質側に再吸収される |
ヘンレループの太い上行脚 | Na+が受動的に再吸収される ・ヘンレループの太い上行脚では、水の透過性が低い。一方Na+は透過する。 →Na+が濃度勾配に従い再吸収される。(Cl-も同様に通過しやすく、再吸収される) |
遠位尿細管 | Na+が再吸収される ・Na+ポンプが働いている。(こっちはATPが使われる) ←傍糸球体のマクラデンサ細胞による原尿中のCl-低下もしくは、輸入細動脈の圧受容体が腎糸球体内圧の低下を感知した場合、レニン→アンジオテンシン→アルドステロン系が働く |
集合管 | 特に水の再吸収(バソプレシンが働いたときのみ) ・下垂体後葉からのバソプレシンが水チャネルを細胞膜に移行させる |
参考:
コスタンゾ(p306)など。下行脚で水が再吸収されることを覚えること。
シンプル生理学p307
血漿pHの調節
基本的に活動するとH+が発生するが、H+のまま排泄すると全然間に合わないので、リン酸緩衝系やアンモニア緩衝系が働いている。アシドーシスとアルカローシスには呼吸性と代謝性(腎機能によるものなど)があり、代謝性の異常を呼吸で代償するのが「呼吸性代償」。逆は「腎性代償」と呼ぶ。
細胞外液のpHの調整に重要なのは、血液の炭酸・重炭酸緩衝系、呼吸による二酸化炭素排出、腎臓による尿中へのH+排出と重炭酸イオン再吸収の調節、の3つである。
特に、
CO2 + H2O ⇆ H2CO3 ⇆ H+ + HCO3+
の平衡を覚え、呼吸により左に平衡が移動する開放系であること、血液中ではヘモグロビンタンパク質のヒスチジンがH+と結合することを記憶すること。左の反応は(例えば近位尿細管細胞内の)(a)__で触媒され、近位尿細管ではH+が管腔側に(ATPを使って)排泄され、HCO3–は再吸収される。(これが腎性代償の結果として血漿HCO3が増減する理由。)
pH異常と代償を考えるとき:
・排泄H+の増減=再吸収HCO3–の増減=代償で起こるPaCO2の増減
である(全部同じ方向に量変化する)。
呼吸性、代謝性の各アシドーシス、アルカローシスの原因と代償作用
血漿のpHがpH7.35~7.45を逸脱した病態をアシドーシス、アルカローシスと言う。異常の初期は原因を特定しやすいが、長期的には代償反応が起きて難しくなる。
以下の表でいいかと思う。アニオンギャップはケトアシドーシスで増えるが下痢での代謝性アシドーシスでは変わらない。
呼吸性アシドーシス (換気障害) | PaCO2↑ | 腎臓による代償でHCO3↑ (増加したH+をNH4-として排泄増加し、HCO3-再吸収は増加。赤血球内でH+やCO2緩衝もある) |
呼吸性アルカローシス (過呼吸) | PaCO2↓ | 腎臓による代償でHCO3↓ (上述の逆。赤血球内で緩衝もある=CO2は血球から出てpHを上げる方向へ作用) |
代謝性アシドーシス (糖尿病性ケトアシドーシス) | H+↑ | H+がHCO3-で緩衝され、 結果HCO3-↓ (呼吸代償によりPaCO2↓) |
代謝性アシドーシス (下痢) | HCO3-↓ | 呼吸による代償でPaCO2↓ |
代謝性アルカローシス (嘔吐) | H+↓ (胃液の喪失) | 胃腸からH+がなくなると、膵臓からHCO3-が外分泌されず、結果 HCO3↑ |
・試験問題とかで考えるときは、まず体内にあるH+量がどうなっているかを考えてスタートするのがいいと思う。
呼吸性アルカローシス
・血中のPCO2が低い状態。
・心因性の過換気や酸素分圧の低い高地で起こる。
・高地での滞在が長いと腎臓の代償機能が働き、血漿HCO3–が低下する。
呼吸性アシドーシス
・血中のPCO2の低い状態。
・肺の換気能低下(気道障害・肺気腫)や肺胞の血流不均衡による。
・腎臓は、尿中にH+を排出し、その結果HCO3–の再吸収、血漿濃度は増加する。
代謝性アシドーシス
・血漿HCO3–濃度が低下状態。
・糖尿病性ケトアシドーシスや末梢組織での乳酸放出増加による。
・呼吸による代償作用が働き、血中のPCO2濃度は低下する。
〇代謝性アシドーシスにはアニオンギャップ増加を伴うものと伴わないものがある。原因はH+増加・排泄不能とHCO3–欠乏(下痢など)の両方。
代謝性アルカローシス
・血漿HCO3–濃度が増加した状態。
・(d)__の喪失、制酸薬の過剰摂取などによる。
・換気量低下による呼吸性代償(PCO2増加)。集合管でのHCO3–分泌増加。
(d)嘔吐による胃酸の喪失
「アニオンギャップ」
=[Na+]-[Cl–]-[HCO3–]
つまり正電荷と負電荷の差がアニオンギャップ(タンパク質の負電荷など)。とくに代謝性アシドーシスでアニオンギャップが増えるタイプのもの(=糖尿病性ケトアシドーシス、乳酸アシドーシス、etc)と増えない(=下痢ではCl–が増えて埋め合わされる)ものがあることを覚えておく。(大前提:血漿でアニオン=カチオン量。)
試験的には、PaCO2と血漿HCO3–濃度が天秤に掛かって釣り合っているのをイメージすればよい(暗記)。H+排出もこれに連動してる。正常でPaCO2=40mmHg, HCO3–=24mmol/Lと資料には記載されている。HCO3–の再吸収は過剰だと代謝性アルカローシス(H+の反対)。
近位尿細管でのHCO3–の再吸収
以下の図を理解しておけばよし。「主な」役目としては、近位尿細管がHCO3–の再吸収で、遠位尿細管と集合管はH+の排泄(H+分泌)である。働いているトランスポーターが少し異なるようだ。H+の緩衝物質として滴定酸(主にリン酸、他に尿酸・クレアチニン)とアンモニアが働く(例:NH3→NH4+, HPO42-→H2PO4–)
近位尿細管でHCO3–の90%が再吸収される。CAは炭酸脱水酵素。Na+とHCO3–共輸送体はここではNBC。詳しめの本では各部位の各トランスポーターが書いてある。
参考
カラー図解 人体の正常構造と機能 全10巻縮刷版【電子書籍つき】p398が分かりやすい
利尿薬の作用メカニズムと分類について
利尿薬は尿細管でのNa+再吸収を抑制によって利尿を起こすが、その作用部位(=標的のトランスポーター)により3つに分類される。
ループ利尿薬
ヘンレループの太い上行脚でNa+/K+2Cl–共輸送体を阻害する。作用は早く強力。低カリウム血症の副作用がある。
サイアザイド系利尿薬
遠位曲尿細管(曲がっているところ)でNa+/Cl–共輸送体を阻害する。低カリウムの副作用がある。
カリウム保持性利尿薬(例:スピロノラクトン)
アルドステロンの受容体結合と拮抗。遠位尿細管で作用。他に、集合管の上皮型Na+チャネルの阻害薬もカリウム保持性。
参考:
アセタゾラミドは主として近位尿細管で作用し、炭酸脱水酵素を阻害することによりHCO3–の再吸収を抑制する。利尿作用を持つが、主に利尿薬としてではなく緑内障の治療薬として用いる。(副作用としては代謝性アシドーシスがある)
交感神経系、カテコールアミンの作用は、α1受容体を介して血管収縮を起こす。α1受容体は輸入細動脈の方に多く、腎交感神経系の活動は腎血流量と糸球体濾過量を減少させる。血流量調整(特に自動調整)については未解明なところも多いようだ。